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東京地方裁判所 昭和45年(借チ)35号 決定

〔主文〕1 申立人堀野正雄が、本裁判確定の日の翌日から六か月以内に相手方に対し金一三、四九六、〇〇〇円を支払うことを条件に別紙目録(一)記載の土地賃借権の目的を堅固建物所有に変更する。

2 申立人堀野雅子が、本裁判確定の日の翌日から六か月以内に相手方に対し金一一、一五一、〇〇〇円を支払うことを条件に別紙目録(二)記載の土地賃借権の目的を堅固建物所有に変更する。

3 申立人らが前記各金員を支払つた場合、別紙目録(一)(二)記載の賃貸借の借地条件中各期間を右各金員支払の日の属する月の翌月から三〇か年に、各賃料を同月分から一か月3.3平方米当り金三五三円にそれぞれ変更する。

〔理由〕一 本件申立の要旨

(一) 精機光学工業株式会社は、昭和一五年一〇月一六日相手方から別紙目録(一)の1記載の土地(以下「本件(一)の土地」という。)を木造建物所有の目的で賃借し、昭和二七年七月一六日株式会社三星絵具製造所が、ついで昭和三一年一二月二九日申立人堀野正雄が、それぞれ右賃借人たる地位を承継し、現在の借地条件は、同目録(一)記載のとおりである。

(二) 株式会社三星絵具製造所は、相手方から別紙目録(二)の1記載の土地(以下「本件(二)の土地」という。)を非堅固建物所有の目的で賃借し、昭和三五年九月七日湘南メリヤス工業株式会社が、ついで昭和四二年一〇月二日申立人堀野雅子が、それぞれ右賃借人たる地位を承継し、現在の借地条件は同目録(二)記載のとおりである。

(三) 申立人堀野正雄は、本件(一)の土地のうえに、同目録(三)の1の建物を、同堀野雅子は、本件(二)の土地のうえに、同目録(三)の2の建物をそれぞれ所有している。

(四) ところで、本件土地附近は、前記契約締結当時においては、平家ないし二階建の木造の住宅事務所、工場等の小建築物が群聚していたが、現在においては、準防火地域に指定されたうえ、キャノンカメラ株式会社の鉄筋コンクリート造四階建、東京都住宅供給公社による鉄筋コンクリート造七階建中根住宅のほか鉄筋コンクリート造七階共同住宅がそれぞれ建築され、現に借地権を設定するとすれば、堅固な建物所有を目的とするのが相当であるに至つた。

(五) そこで、申立人両名は、本件各借地契約の目的を変更して堅固な建物所有目的にし、現存建物を堅固建物に改築すべく計画中であるが、相手方との間に借地条件変更の協議が調わないので、右のごとき借地条件変更の裁判を求める。本件各借地契約は、夫婦が各借地人であり、各借地をそれぞれ相互に利用しうる特約があつたのであるから、申立人らによる共同ビルとして、鉄筋コンクリート造五階建建物を建築する計画であるが、もし、右特約の存在が認められない場合は、申立人らの各借地上に各鉄筋コンクリート造五階建建物を建築する計画である。

二 当裁判所の判断

(一) 本件で取調べた資料によれば前記一の(一)ないし(三)の各事実を認めることができる。

また、右資料によれば、本件(一)(二)の土地賃借権が成立したころには、本件土地附近は木造建物が大部分であり、非堅固建物所有目的の借地権が通例であつたと推認しうるが、現在附近一帯準防火地域に指定されたほか、堅固建物が蝟集しているとはいえないが、しだいに堅固な建物が増大しつつあつて、今後土地価格の上昇に伴いこの傾向は一層進行するものとみられ、本件土地は、附近の土地利用状況の変化により、現に借地権を設定するとすれば堅固な建物所有を目的とするのが相当に至つていると認められる。

ところで、申立人らは、第一次的には、目的変更後本件(一)(二)の各土地を一括利用して申立人ら共有の建物を建築すべく計画中であるが、本件において取調べた資料によれば、申立人らは夫婦であり、申立入堀野雅子が借地した際、同堀野正雄の借地部分に各存する建物もすべて株式会社ミニカムが使用する予定であり、その後も同社がこれを使用してきたことは認めるが、借地上の建物を第三者に使用させるのは、借地人の権利に属することであり、本件(一)(二)の各借地上には各独立した建物が存し、その買受資金も申立人らが各別に出していることにてらせば、右事実のみで、本件(一)(二)の各借地を共同して使用しうる旨相手方との間に合意したとは認めるに足りず、他にこれを認めるに足る資料はない。そこで、申立人らが目的変更後共同建物を建築する申立ては不適法である。しかし、申立人らは、右共同使用の特約が認められない場合は、申立人らが各自の借地にそれぞれ申立どおりの堅固建物を建築する計画であり、右のごとき計画であればこれを不適法とすべき理由はない。他に目的を変更し申立人の計画を行なうことを不当とする事由はない。(申立人らは各建築建物を階段室ないし廊下で連絡する予定であるが、申立人らが各借地上に独立した所有権をもつた建物を建築する以上、これを社会的に容認しうるかぎりで接続することは許されることであり、また、建築技術上不可能ではないので、計画が右のごときものであることが本件各申立を不当とする事由にはならない。)そこで、本件各申立は後記の条件の下に認容すべきである。

(二) 附随の処分について判断する。

鑑定委員会は、申立人らに対し財産上の給付として金二二、三四四、〇〇〇円を支払わせ、賃料を一か月金六三、二四〇円(3.3平方米当り金一一八円)にするのを相当とし、給付金の算定につき、(イ)借地権価格の増加分相当額に更新料相当額を加算して得た額 (ロ)近隣における条件変更の事例による額 (ハ)更新料相当額に借地の利用効率の増加率を乗じた額の三方式により算出し、その平均額をもつて給付金としている。

当裁判所は、本件賃貸借の目的を堅固建物所有に変更するに伴い、各借地期間を後記各給付金支払の目の属する月の翌月から三〇か年に変更する。そして、本裁判により、期間が延長されるほか、建物の耐用年数の延長による朽廃時期の延長、建物買取価額による更新拒絶権の制限をもたらし、結局賃貸人に対し、土地返還の期待を減じさせる不利益を与え、賃借人に対し借地利用権を安定させる利益を与えるのであるから、右利霧を調整するため、申立人らに給付金の支払を命じ、賃料を増額すべきである。

ところで、本件土地の更地価格につき、右委員会の評価額を規準とし、昭和四五年度、四六年度における日黒区内の公示価格の平均値上り率(8.57%)により時点修正し、現在価格を右の二〇%増の3.3平方米当り金三八四、〇〇〇円と認め、借地条件変更前の借地権価格をその七〇%とし、借地条件変更後の借地権価格を前記委員会の(イ)(ロ)の算定方法を参考にし、右更地価格の八二%と評価するのが相当である。(意見書の(イ)は、期間延長による更新料を借地権価格の増加分と別に評価するが、借地権価格には、期間的考慮を当然に含むものであるから、これを別個に評価するのは相当でなく、本件において相手方は、他に土地を所有するもので、本件土地につき将来更新を拒絶しうる正当事由が具備する可能性は少ないが、右各利害も考慮に加え右のとおり評価する。)しかして、右借地権価格の増加分は、申立人らが、相手方の不利益において利益をえたのであるから、これを相手方に給付させるのが衡平であり、結局申立人らに対し、各借地の更地価格の一二%にあたる申立人堀野正雄において金一三、四九六、〇〇〇円、同堀野雅子において金一一、一五一、〇〇〇円(各千未満切捨て)の給付金の支払を命ずる。

賃料について判断する。本件借地権価格が、更地価格の八二%であること前示のとおりであるから、割合方式による底地価格は、更地価格の一八%となり、これに対する利廻りを、目的変更後の申立人らの改築計画による土地の有効使用の程度はほぼ最有効使用の状況にあるが、土地価格は、他の物価上昇より高率であることならびに本件賃貸借の経緯により、年五%としこれに公租公課を加算して、賃料を試算すると一か月3.3平方米当り金三五三円となる。右賃料は、比準賃料に対しやや高額であるが、本件土地が、収益物件用の土地として高度に利用されることにかんがみ、右賃料をもつて本件改訂賃料とする。 (筧康生)

目録(一)

(借地条件)

1目的土地 東京都目黒区中根二丁目六二番宅地1765.28平方米(五三四坪)のうち968.28平方米(292.90坪)

2目的 木造建物所有

3期間 昭和五五年一〇月一五日まで

4賃料 一か月金二六、四〇〇円(3.3平方米当り金九〇円)

目録(二)

(借地条件)

1目的土地 東京都目黒区中根二丁目六二番宅地1765.28平方米(五三四坪)のうち799.99平方米(二四二坪)

2目的 非堅固建物所有

3期間 昭和五五年九月六日まで

4賃料 一か月金二一、八〇〇円(3.3平方米当り金九〇円)

目録(三)

(建物)

1東京都目黒区中根二丁目六二番所在

家屋番号二六九番二

木造スレート葺二階建工場

一階 371.07平方米(112.25坪)

二階 358.67平方米(108.50坪)

2同所同番所在

家屋番号二六九番三

木造スレート葺二階建

一階 371.07平方米(112.25坪)

二階 358.67平方米(108.50坪)

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